ペリドットは、K33区の広場で、たき火にあぶられながら、星々をながめていた。

彼は待っていたのだった。

近日中にメッセージが来ると、「真実をもたらすトラ」に告げられたから。

足元のZOOカードボックスが光ったので、メッセージが届いたことを知った。

「お? 来たか」

彼は、ZOOカードのふたを開けた。

 

アンジェリカも、つねに枕元に置いている、紫色の箱が銀色の光をともし始めたので飛び起きた。アンジェリカの意志では動かなくなった今、ひさしぶりの反応だった。

「銀色の光――月を眺める子ウサギだ!」

「アンジェ、今の光は、」

隣室から、サルーディーバも駈け込んで来た。箱のふたは自動で開いた。ふたりは、息をつめて、それを見守った。

 

 

 

「羽ばたきたい椋鳥」、「文豪のネコ」、「図書館のネコ」、「色町の黒ネコ」、「孤高のキリン」、「サルーディーバ」――。

アンジェリカがはじめてルナを占ったときに、ルナが助ける人間だと表示されたカード群だった。

それらはキラキラと白銀色の輝きにつつまれて、くるくると回転した。カードの回転がぴたりと止まる。――六枚のカードは、あらたな絵柄に変化していた。

 

「英知ある灰ネズミ」

「かごの中の子グマ」

「裏切られた探偵」

「バラ色の蝶々」

「天秤をかつぐ大きなハト」

「迷える子羊」

 

『順番は、多少前後するわね』

月を眺める子ウサギは言った。

「アンドレアさんも、入ってる――」

ルナが呟くと、ウサギは、『そうよ』とうなずいた。

 

「――迷える子羊」

サルーディーバとアンジェリカも、同時に読み上げた。

「これはもしかして――姉さんのカード?」

「……」

アンジェリカが必死で探しても出てこなかった、サルーディーバのカードだった。なぜ、これがサルーディーバのカードだとわかったかと言えば、カードの絵は、サルーディーバの衣装を着た子羊が、涙している絵柄だった。

サルーディーバも、自身のカードを知っていたわけではないようだ。

「迷える子羊とは……」

自嘲めいたため息をこぼしたあと、

「そうかもしれませんわね」

とつぶやいた。

 

「いよいよか」

ペリドットは、「天秤を担ぐ大きなハト」のカードを、自身の化身である「真実をもたらすトラ」と見つめながらつぶやいた。

『“コイツ”が出てきたということは、月を眺める子ウサギが、軍事惑星を救おうと動きはじめたということだ』

トラは重々しく言い、

『あとの五枚はおまけのようなものだ。コイツがいちばん大変だぞ』

羽ばたきたい椋鳥よりも、と言いかけたトラを遮り、ペリドットは腕を組んだ。

「まずは、“ラグ・ヴァーダの武神”との戦いが先だ」

『あたりまえだ。今度こそ“ラグ・ヴァーダの武神”を倒さねば、そこまでたどり着けん』

ペリドットはうなずいて、

「そうだ――これが成し遂げられなければ、軍事惑星群も、ひいては、L系惑星群が、終わりだろう」

 

 

ルナは、カードの名前を日記帳に書き写し、「このひとたちの名前って教えてもらえないの?」と聞きかけたが、マイペースなうさこは、すでに消えようとしていた。

「ちょ、ま、うさ、うさこ!」

『そうね、ルナ、ハトさんに会ったら』

半透明になったウサギは、言い忘れたといってもどってきた。

『黄金の天秤を、おねだりして』

「黄金の天秤!?」

『そうよ、おもいきり豪華な、黄金の天秤ね』

「……」

いつもどおり、さっぱりつかい道も、用途も不明な要求である。

ルナは意味が分からなくてアホ面をしたが、うさこはさらに爆弾発言をした。

『その天秤で、あなたはサルディオネになるんだから、ものすごくゴージャスな物を要求しなさいね?』

「はえ!?」

 

 



*|| BACK || TOP || NEXT ||*