noon

 

ルーク

 

デビッド

 

ラフラン

 

ルフ

(戦車)



sun



earth

 

ナイト

 

ベッタラ

 

ジリカ

 

ファラス

(馬)



earth



night

 

ビショップ

 

ノワ

 

ボラ

 

フィール

(象)



noon



moon

 

キング

 

シップ

 

シェハザール

 

シャー

(王)



night



lag bada

 

クイーン

 

ミシェル

 

ツァオ

 

フィルズ

(将軍)



night



sun

 

ビショップ

 

エマル

 

ペリポ

 

フィール

(象)



astollos



astollos

 

ナイト

 

ニック

 

ピャリコ

 

 

ファラス

(馬)



moon

 

 

 

 

ルーク

 

イシュメル

 

モハ

 

ルフ

(戦車)



lag bada



masa ja hana

 

 

アズラエル

 

メルヴァ

 

ジャマル

(ラクダ)



masa ja hana



masa ja hana

 

 

グレン

 

 

 

 

 ブルーライトだけがついているアトラクション内に、コンピューターグラフィックスの、「シャトランジ!」の対局表ともいえるべき画像が、壁面に浮かび上がっている。

アントニオは、対局表を見上げた。

 

 「これが、改造後のシャトランジ! か……」

 デジタル画像の星守りが両脇にならび、チェスとシャトランジの駒の名、その駒となる人物の名が、ずらりとならんでいる。

 あいかわらず、エーリヒの対局席から見下ろせるように、チェスの盤が敷かれているのは変わりがない。

 

 「相手は、メルヴァの八騎士か――!」

 アントニオは身震いした。王宮護衛官の中でも、文武両道の猛者たちばかり。このなかでは唯一の女性であるピャリコも、いかつい王宮護衛官たちに並んで遜色ない体格と、剣の腕を誇る女剣士である。

 それに立ち向かうのは、デビッドにエマル、ニックとベッタラ、イシュメルとノワ。

 (イシュメルとノワのリカバリを急いだのは、このためだったのか)

 アントニオは、やっと腑に落ちて、ちいさく嘆息した。

 

 「おかしいな……ポーンがないぞ」

 シェハザール側のシャトランジには、ハイダク(歩兵)が、シャー(王)の駒の前方に八基、ならんでいるというのに、エーリヒ側のチェスには、歩兵にあたるポーンが、ひとつもなかった。

 

 「それに、メルヴァのジャマル(ラクダ)……」

 メルヴァだけは、サザンクロスにいることが――とりあえず分かっている。

 サスペンサーにそれを告げたことで、サザンクロスにも調査隊が向かっただろうが、おそらく間に合うまい。

 ジャマル(ラクダ)の動きは、チェスのクイーンのように、斜め四方に、どこまでも動ける駒である。

 サザンクロスから、アクルックスを縦断し、クルクスに入るルートが、まるで障害物のない、「ジャマル(ラクダ)」の動きのようだ。

 ひといきに、右斜めに突撃し、バスコーレン大佐がまもる市街地へ――そこから、左方向へ、ななめに走りぬき、クルクスへ。

 

 「……」

 アントニオは、賢者でもなければ英知ある動物でもない。じっさいの勝負は、エーリヒにまかせるしかない。

 「そういや、ルークのイシュメルには、星守りがないな……」

 不思議そうに、ふたたび対局表を見上げたアントニオは、ようやく気付いた。

 

 「――え?」

 アントニオは、目を疑った。

 「シップ……?」

 

 キングの座にあるのが、「ship」――つまり。

 

 「地球行き宇宙船が、キングなのか!?」

 「そうみたいなんです」

 いっしょに対局表を見上げていたセルゲイが、やっとつぶやいた。

 最初の予定では、キングにして「アリーヤ(棋士)」がエーリヒのはずだった。

 「でも、どちらにしろ、エーリヒさんは、ここで対局をすることになりますし、あながち、間違いでもないと思います」

 「それにしたって――宇宙船がまるごと、キングだなんて」

 相手にとっては、この宇宙船を滅ぼすことが、「シャー・マート」、つまり「チェック・メイト」とおなじ意味になるのか。

 「……」

 アントニオは言葉を失って、コンピューターグラフィックスを見上げるだけだった。

 

 「俺は、これを見てもさっぱり意味がわからないんだけど、夜の神が言ったことを、そのままお伝えしますね」

 セルゲイは前置きした。

 「それぞれ、星守りを身に着けて、それぞれの星と神の守護を得て、駒になるわけです。だからつまり、太陽の神と昼の女神が発動してないと、それらの星守りを持った駒は、加護が弱くなるから、夜の神と月の女神の駒とあたれば、確実に負けるっていうんです」

 「――あ、そうか」

 アントニオは、はっとした。

 「それは相手にとっても同じだけど、もし盤上で、こうなったら」

 セルゲイは指をさした。

 



sun

 

ビショップ

 

エマル

 

ツァオ

 

フィルズ

(将軍)



nigut


 「エマルさんのほうが、確実に負けます」

 「……!」

 アントニオは、頭をかきむしった。

 「それは、逆に言えば相手側も、オレンジは、黒に弱いってことですけどね――星々の場合は、どう作用するか、夜の神もわからないと言っていましたが、すくなくとも、力関係はこうなってしまうから、やはり太陽の神様も、真昼の女神さまも発動したほうがいいということです」

 

 「ああ~! やっぱりそうしなきゃダメか!」

 せっかく、夜の神をおさえなくて済むと思ったのに!

 

 アントニオの絶叫は、無理もなかった。

 彼がいちばん心を砕いてきたのは、地球行き宇宙船の安否なのだから。

 この船で太陽の神を発動させるしかない。アストロス内で太陽と夜の力を拮抗させるわけにはいかないのだ。

 四神にくわえて、アストロスの武神ふた柱――ひと柱になるかまだわからないが――おおきな力が加わることになる。

 アストロスも、地球行き宇宙船も、持つかどうかが心配だった。

 

 船客も船内役員も、できるかぎりアストロスに避難させる。

 そして、真砂名神社でイシュマールたち神官、K33区で、マミカリシドラスラオネザひきいるエラドラシスの呪術師、K25区でサルーディーバ、K21区で、呪術師の前世をリカバリし、さらに八転回帰で力を増幅したセシルが、燃え上がる太陽の火から、船員たちをまもる。

 さらに、百五十六代目サルーディーバの予言の絵、ミシェルが描いた二枚目が、いざというときは、船の運命を背負って燃えるよう、術をかけた。

 そこまでしても、完璧なる安全は、保障されない。

 

 「アントニオさん」

 セルゲイが今度は、はげますように彼の肩に手を置いた。

 「でも、夜の神をおさえることに気を取られなければ、まだコントロールもしやすいんじゃないでしょうか」

 「……そ、そうかも」

 アントニオは、かきむしって、これ以上モジャモジャになりようもない髪のまま、ふらふらと立った。

 

 「お互い、胃がいたいね……」

 アントニオは遠い目をして笑い、セルゲイも、なんともいえない笑みをこぼした。

 「ほんとですよね。夜の神様、俺になんて言ったと思います?」

 「だいたい想像つくよ」

 「“アストロス、地球よりちょっとちいさいから、割れたらゴメン”だって」

 

 



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