ルナ……「月を眺める子ウサギ」

アズ……「傭兵のライオン」

ミシェル……「ガラスで遊ぶ子猫」

クラウド……天才「真実をもたらすライオン」

リサ……「美容師の子猫」

ミシェル……「裏切られた探偵」

キラ……「エキセントリックな子猫」

ロイド……「裏切られた保育士」

グレン……「孤高のトラ」

セルゲイ……「パンダのお医者さん」

ルーイ……「泳ぐ大型犬」

カレン……「孤高のキリン」

……「羽ばたきたい椋鳥」

エレナさん……「色町の黒い猫」

ジュリさん……「色町の野良猫」

ナターシャ、ブレア……「双子の姉妹」

ケヴィン、アルフレッド……「双子の兄弟」

アントニオ……「高僧のトラ」

サルディオネさん……「ZOOの支配者」

サルーディーバさん……「迷える子羊」

黒い鷹さんがいる。だれ?

ナターシャ……「パティシエの子猫」

ブレア……「ぐるぐる回る子猫」

ケヴィン……「文豪の猫」

アルフレッド……「図書館の猫」

 

「――「孤高のトラ」って、グレンのことか」

なるほど、とクラウドは呟いた。「……彼が、「孤高」ね」

「グレンだ? アントニオじゃなかったか?」

「いいや。アントニオは「高僧のトラ」だ。「孤高のトラ」じゃない」

クラウドは、すばやくそのページの名称と名を暗記した。クラウドの記憶力はずば抜けている。三度それを読み、しっかり頭に叩き込んだ。

アズラエルが、不思議そうに尋ねる。

「グレンとサルーディーバ? いったいなんの関わりがある?」

「あるさ。サルーディーバはガルダ砂漠でグレンを助けた」

「だからって? それで終わりだ。それにアイツは終始ぶったおれたまんまで、サルーディーバの顔さえ分かってねえんじゃ、」

「さあ? そんなの分からないさ。見えていたかもしれない。アズの言うとおり、もしもサルーディーバが女なら、」

クラウドは冗談めかして言った。

「グレンを挟んで、ルナちゃんと女の戦いを繰り広げることもあるかも?」

「バカか。……第一、ルナが好きなのは俺だ。グレンの一つや二つ、欲しけりゃ譲る」

「冗談だよ。サルーディーバってのは、生涯神に仕える神官として独身が原則だからね」

クラウドは笑って言ったが、しばしの沈黙の後、神妙に呟いた。

 

 「……気になってることがあるんだ」

 「なんだ」

 「カサンドラが言ってた。カードには、一つ一つ意味がある。……ウサギって動物がつくカードは、『自分の身を犠牲にして、誰かを救う』カードなんだって」

 「おい、冗談よせ」

 背筋がひやりとし、アズラエルは唸った。

 「冗談は言ってない」

 「たかが占いだろ」

 「そうだね。……たかが、占いだ」

 クラウドは、深い思慮のさなかにいる眼差しで、今日何度となく飲んだコーヒーを見つめた。

 「カサンドラが言ってた。ウサギのカードは、どれも間違いなく、悲劇的な死を迎える。……必ず、」

 

 「やめろ」

 アズラエルが遮ると、クラウドはまっすぐな目で彼を見た。

 「占いなんだろ? たかが」

 「言っていいことと悪いことがあるだろうが! ルナに聞かせる気か、それを」

 「ルナちゃんに言うはずないだろう、だから、アズに言ってるんだ」

 クラウドの目は悲観してはいなかった。

 「希望はあるんだ。カードは変わるんだそうだ。運命が変わるのと同様に。よく見て」

 クラウドは、ルナの日記帳を広げた。ZOOカードの名称のページを。

 「おかしな話だろ。ZOOカードなんだから、必ず動物の名がつくはずなのに、ミシェルとロイドのカードには、動物がついていない」

 アズラエルが見ると、ほんとうにそうだった。メンズミシェルは「裏切られた探偵」、ロイドは「裏切られた保育士」。どこにも動物の名がない。

 

 「ルナちゃんは、ナターシャちゃんたちのカードにも線を引いて、新しい名を書き足している。カサンドラも言っていた。人生の転機を乗り越えると、カードは変わることがあるんだって」

 「……」

 「動物がついたカードもそうだ。運命は変わる。それに、「ZOOの支配者」であり、ZOOカードの生みの親であるサルディオネが、このことを知らないわけはない。だけど、サルディオネは、ルナちゃんにウサギのカードの意味を告げていない。ルナちゃんは、知らない。自分のカードの意味を。サルディオネはルナちゃんとは友人だ。まさか友人を、ウサギのカードだからといって、みすみす見殺しにするとは思えない。なにかきっと、理由があると思うんだ。俺は一度、サルディオネと話してみたいと思う。アズも行くだろう?」

 「……ああ」

「ねえアズ。きっとなんとかできる。俺だって、ルナちゃんが死ぬのは見たくないし、ミシェルだって悲しむ。そんなのは嫌だ。だから、俺は、ルナちゃんのカードの意味を考えてみるよ」

 「……」

 「それに、カサンドラは、死ぬ寸前にあるパスワードを俺に教えてくれた」

 「パスワード?」

 「ああ。……いったい何のパスかはしらない。だけど、この流れで行くと、このパスワードが、もしかしたらルナちゃんを助ける手掛かりになるかもしれない」

 「それは……俺にも言えないか?」

 「言ってもさ、多分わからない。俺も意味が分からないしさ、」

 「そうか……」

 「アズ、」

 クラウドは、アズラエルを元気づけるように笑った。

 「心配いらない。必ずルナちゃんのカードの意味を突き止めて、それからルナちゃんが……悪いことにならないように、考えてみる。なんてったって俺は、「真実をもたらすライオン」だからね」

 

 

アズラエルが、クラウドと一緒にK36の自分のマンションに戻ってきたのは、九時も過ぎたころだった。ルナはミシェルと、テレビを見ながら馬鹿笑いしているところだった。

なんとなく、さっきまでの話が胃の腑に残って、ふたりとも黙ってルナとミシェルの後姿を眺めていた。

クラウドが先に声をかけた。