「ねえ、アズ、グレン! へんなゆめ見ちゃったよ!」

 ルナはとててて、とアズとグレンの傍に寄ったが、

 「夢の話は明日聞く。もう一回寝たら、また見るかもしれねえだろ」

 とアズラエルは言った。そうだ。まだ深夜なのだ。

 「え? でも、すごく話したいこといっぱいある――」

 「だから明日。――いつまでも起きてると、ヤッちまうぞ」

 グレンも、がう! と吠えるような真似をした。ルナは怯み、

 「それはやだ。うん……じゃあ、もっかい寝るよ。おやすみ……」

 

 なんとなく、違和感を覚えながらルナは布団に戻り、薄いかけ布団を羽織った。

 

 ――なんか変。なんか違和感があるよ?

 

ルナが、言葉にできない違和感を抱えながら布団にくるまると、それはアズラエルによって、すぐに取り去られた。

 「なにするの!」

 いくら暖かくなったとはいえ、薄かけ布団もなければ夜は寒い。ルナは怒ったが、足元の男どもはにやにやしているだけだ。

 「あとでちゃんと掛けてやるよ」

 ウィスキーを傾けながら、アズラエルは口元を歪めた。

 「鑑賞させろ。鑑賞」

 なにをだ。

 ルナは横になって目を瞑ろうとしたが、どうも落ち着かない。

 

 「――ねえ、なんでふたりともこっち見てるの」

 

 男たちの視線は、ルナを凝視したまま外れない。

 「この服――マジで色っぽいな」

 「ああ」

 グレンが呟き、アズラエルが同意する。ケンカするなと言ったのはルナだが、今度はほんとうに仲良くなってしまったのか。なんとなく、喧嘩していた方がマシな気がしてきた。このふたりが結託したら、碌なことにならない気がする。

 

 「襟元が乱れたら、サイコーだよな……」

 「足もいいぜ。――ほら、こんなふうに」

 アズラエルがルナの裾を摘まんで、がばっと肌蹴た。

 「――っちょ!」慌てて起き上がって、裾を隠そうとしたら、足首をアズラエルに持ち上げられた。

 「ヒュウ♪ 生足♪」

 「離して! ぱんつ! ぱんつみえちゃう!!」

 「セクシーだろ?」

 「ああ。いい眺めだな」

 「ほらルナ。セクシーだとよ」

 アズラエルが思わせぶりに言うが、ルナは喜んでいいのかどうか、謎だった。少なくとも今は喜べない。

 

 「じゃあ、俺たちも寝るか」

 「そうだな」

 あっさり、アズラエルはルナの足を離した。ルナは慌てて布団に潜りこむ。ふたりは酒を片付けて、しばらく姿を消した。トイレか、歯を磨きに行ったのか。

 ルナはうさぎ口になって布団にくるまる。

 なんでいきなり、こんな目に。

 朝まで寝ていればよかった。

 

 一回寝たせいなのか、まるで眠気が襲ってこない。ルナが目を瞑って、寝たふりをしていると――ふたりがそばにやってくる気配がする。やっぱり、グレンは部屋に戻らないのか。

アズラエルがルナの右隣に寝そべる。グレンは左に。ルナは見たわけではない。エキゾチックな香りが右、ムスクの香りが左。そういう気配。

ルナは自然とふたつ敷かれた布団の、まんなかに追いやられる形になった。ルナは筋肉に挟まれて、どことなく暑苦しいと思ったが、ルナを真ん中にする以外にどういう配置で寝ろというのか。ルナは左も右も、どっちも向けずに、天井を向いた。

(早く寝てよね)

ルナは二人が寝たら、グレンの花桃の部屋へいくか、場所を変えて寝ようと思っていた。

が。

 

 「……!?」

 どっちの手か。枕元のライトも一つ消され、入り口付近に残ったライトのみで真っ暗になった部屋で、ルナの胸元に忍び込んできた手があった。

 ルナがぺチン! とその手を叩くと、今度は逆から太ももを撫でられた。

 もちろんルナはその手も叩いたが、今度は急に、唇を塞がれる。キスだ。強いキス。唇を吸い上げられ、それからぬるりとした舌が忍び入ってくる。ルナがもがくと、大きな掌がもう一度、ルナの胸元に入ってきて、乳房を掴んだ。

 さっき、大浴場まえでアズラエルにさんざん煽られた身体が、ふたたび熱を持ってくる。

 

 (んんん……っ!)

 ダメです。ふたりいっぺんなんて、死んでしまいます。

 最悪の予想が、現実になってしまった。

ルナは首を振ろうとしたが、キスから逃れることはできなかった。アズラエル一人にだって簡単に拘束されてしまうのに、グレンにまで抑えつけられたら、ルナが身動きできる範囲など、全くなくなってしまう。

 

 「――おい、グレン」

 アズラエルの声が、後ろから聞こえる。ルナの胸を揉んでいるのは、アズラエルだ。乳首を指先で弄りながら、低く脅すような声音で、ルナの耳元で囁く。ルナはその声にも反応してしまう。

 (……っ!)

 さっそく身体がぞくぞくして、言うことを聞かなくなってくる。

 「入れたら刻むぞ」

 「……分かってるよ」

 「……はふっ」

 キスをしていたのはグレン。息継ぎもさせてもらえないキスが終わり、ルナはやっと酸素を吸い込んだ。解放されたルナの舌先を軽く噛み、グレンはふっと笑った。

 「入れなきゃいいんだろ? 入れなきゃ、」

 「――ひゃ!」

 浴衣の襟元を乱暴に開かれる。グレンが、性急さはないものの、ルナの乳房を掴んで顔を埋めてくる。アズラエルの手はもう、ルナの素足を撫でていた。うなじに吸い付かれる音がする。

 「アズ! グレン! らめです!! らめ! ふたりでしたらあたし死んじゃう!」

 「おう。死ぬほど可愛がってやる」

 「そういういみじゃなく!!」

 ルナは、嫉妬深いはずのアズラエルに、助けを求めた。

 「アズいいの!? グレンがあたしに、」

 「俺はもう我慢できねえんだよ。それに、グレンを追い出せばおまえが怒るだろ」

 追い出せば、じゃなくて、いつまでも喧嘩ばかりしているから怒ったのだ。

 「――ルナ」

 グレンが、困ったような顔で下から見つめてくる。

 「俺が嫌いなのか?」

 その顔は困る。その顔はしないでほしい。「……〜〜っ!」

 ルナが返事に窮していると、「……愛してるよ、ルナ」とグレンが下から唇を吸い上げてくる。

 

 「……や、……あ!」

 肌に与えられる口づけたちが、いちいち強すぎる。ルナは、めのまえのグレンの厚い肩を押しのけようとしたが、乳首にむしゃぶりつかれて悲鳴を上げてのけぞった。

 (――は、あっ。あっ……!)

 アズラエルが、耳たぶを唇でやわく引っ張りながら、ルナの下着を取り去る。

 「ガッつきすぎじゃねえのか、グレン」

 「るせえ……」

 グレンの額にも、玉のような汗が浮かんでいた。

「おまえ、コレで入れるなとか、鬼だろ」

 「……や、あ、ああっ! アズ、や、そこ、さわんないで……!」

 「ソコって、ドコだよ……」

 ルナが必死で身悶えているが、アズラエルの片腕で拘束された身体は、抵抗もままならない。意地の悪い甘い声が、ルナの耳を擽る。

 「こんなに濡らして……。グレンに見られてるからか?」

 「――ふうん。俺に見られて濡れるのか。ルナは……」

 意地悪な声が二つ。グレンの指が、ルナの唇を撫でていって、アズラエルの指がルナの中に入ってくる。そのあいだも男たちの掌は、引っ切り無しにルナの肌を撫でまわすのだ。吸い付くような肌触りを楽しむように。おかしくなりそうだ。ルナは首を振った。