「可愛いな、……」

グレンはしばらく、ルナがあえぐ様子を眺めていたが――、

 「なるほど。――ヌレヌレだ」

 身を沈めると、がばっとルナの足を広げて覗き込んだ。ルナは暴れた。

 「ひゃ、やだやだやだやだっ! グレン!」

 「あっ、コラ!」

 アズラエルはしかめっ面をしたが、「――まあ、いいか」とルナの足を後ろから持ち上げて開かせた。じつに協力的に。

 

 「や、だ、め、やっ――あっ!」

 「俺がやろうと思ってたのに……。コレ、好きだよな、おまえ」

 ルナが耐え切れなくて腰を引くほど、グレンの舌が追ってくる。そのうえ、アズラエルの指が、嫌なタイミングで中を擦りあげてくるのだ。

 ルナは、早々に白旗を上げた。

 (は、……ひっ。……も、もうダメ……!)

 「……もうダメ? 始めたばっかじゃねえか。ルゥ、そんなに気持ちいいのか……?」

 (――は、――は、……ああ……、)

 アズラエルの低い声もダメなのだ。グレンの渋い声も。今日は、ダメな要素が多すぎる。ルナは強すぎる快感に、ガクガクと震え、泣いた。

 アズラエルがルナの中から指を引き抜き、その手でルナの胸を揉みあげる。

 「おまえはほんと、どこもかしこもプニプニだな」

「や、……や、ヘン、なさわりかた、しないで……!」

 「おまえが言うと、エロ親父にしか聞こえん」

 「……るせえ。おとなしく犬になってろ」

 

 「もうだめ――やめ、おねが――、」

 「そんなに可愛い声出されちゃ、ますますやめられねえな」

 くぐもったグレンの声。そして。

 「いい子だ――ルゥ」

涙目のルナのこめかみに、アズラエルの優しいキスが降ってきて、「――ン?」

 「やああああんっ!」

 ルナが、のけぞって悲鳴を上げた。アズラエルが指を抜いたのを見計らって、グレンがルナのなかへ押し込んだのだ。……ナニを? 決まっている。ルナの足の間にあったはずの銀髪頭が、めのまえに現れたので、アズラエルは怒鳴った。

 

 「おまえ! 入れねえって約束だったろうが!!」

 「どこの聖人君子だよ。――無理だ絶対!」

 ルナが、息も絶え絶えにグレンにしがみつく。

 「は、や、いっちゃう、や、ン! グレン……っ!」

 「は? ちょっと待て、それは早すぎる」

 グレンが遠慮がちに腰を突き上げると、「ひあ――!」とルナが強烈に締め付けた。

 「っっ……! オイ、……ルナ、…冗談だろ?」

 アズラエルが呆れ顔で、ぐったりとしたルナを抱きすくめ、髪の毛にキスしながら言った。

 「この子ウサギちゃんはな、たっぷりソコ可愛がってから入れるとな、すーぐイッちゃうんだよ。……というわけで、お前は終わりだ。抜け」

 「バカかおまえは。ここで抜けるか」

 「ひっ! や、あぅン……っ、」

 鼻にかかったルナの声に、グレンの熱が一気に下半身に集まる。

 「ルナ――最高だ。……可愛いよ」

 グレンがルナの鼻先にちゅっとキスし、囁く。ずるり、と一度先端まで引き抜いて、強く押し込む。ルナの喉が鳴る。「ルナ――」グレンの口がルナの口を塞ぎ、ゆっくりと中を抉るような動きが、激しいだけのそれに代わって――、

 「や、グレンっ! グレ――!」

 「あー……、ヤバいなおまえ、……っく、」

 グレンが眉をしかめて震える。ルナの身体ももう一度強く跳ねた。グレンが引き抜くのももどかしく、アズラエルがルナを背後から羽交い絞めにする。

 

 「この、インラン」

 間髪おかず、アズラエルが強引に押し入ってくる。

 「ひゃ――! アズ……!」

 「そんなにグレンが良かったか……?」

 無理に後ろを向かされて、噛みつくようなキス。いつもの優しさもなにもあったものではなかった。最初から乱暴に揺さぶられ、突き上げられ、ルナは悲鳴を上げた。

 ぐちぐちと、耳をふさぎたくなるような音がルナの耳にまで聞こえ――、

 (――! ……っ! し、死んじゃう、死んじゃうっ)

 「おまえは俺の女だろ?」

 アズラエルに耳を食べられるかと思った。歯形が残るほど噛まれた痛みも、快感としか認識しない。

 「ほかの男に突っ込まれてよがる女は、――オシオキだ」

 

 グレンは、ルナの額や頬にいたずらなキスを落としながら、ルナがあえぐ様を眺めている。ルナの掌に、自分の大きな手を重ねて、指を絡ませながら。

 「う〜ん。可愛いな、サイコーに可愛い。……どうしたルナ?」

 (死んじゃう……! グレン助けて!)

 「ああいいよ。もっとヨクしてやる」

 「……っひゃうんっ!」

 グレンが胸に吸い付いてくる。遊んでいた彼の指が、ルナとアズラエルの結合部をぬるりと撫でていって、ルナを喘がせ、アズラエルは眉を不機嫌そうにしかめた。

 「ああっ! ああァあっ……!」

 もはや快感なのか、なんなのか分からない。アズラエルに貫かれて最初の絶頂が襲ってくる。アズラエルは離してはくれない。ルナがグレンに腕を伸ばすと、アズラエルがルナの小さな手ごと抱きすくめ、「……なんでおまえは、そう俺の嫉妬を煽るのが上手いんだ? これ以上激しくしてもいいのか?」と脅してきた。

 

 「ら、らめ、らめ――も――!」

 ルナの手を取り上げられたグレンが、ルナの足を持ち上げて、指の先にキスしている。足指からゆっくりと舌を這わせ、内腿へ――。ルナの浴衣を辛うじて止めている帯を見ながら。

 「……なあアズラエル」

 「あ?」

 アズラエルは不機嫌そうに、だが執拗にルナを揺さぶりながら、返事だけはした。

 「次は、この帯でルナを縛って、足の先まで嬲り尽くすっていうのは?」

 「悪くねえな。――ルゥ、ダメだ。まだ、眠らせねえぞ」

 ドS野郎どもの声が聞こえる。

 「ひゃうっ! あっ、あ、あああっ……!」

ルナは、アズラエルがイクまえに、またイってしまった。

 

 ――ルナは、心に決めた。

 アズラエルとグレンと、どこかへ泊まるときは必ず、自分だけ別の部屋を取ろう――。

 

 

 「――ふひ」

 

 アズラエルが寝かせないと言ったのは本当だった。ライオンとトラが、ウサギを離してくれたのは、明け方近くだ。ルナは二度も失神しかけたが、そのたびにアズラエルとグレンにキスやら何やらで起こされた。いつもなら、ルナが気を失えば、そのまま寝かせておいてくれるのに。

 

 (――もう、動けましぇん)

 

 ルナは、素っ裸で布団に倒れ伏しながらもういっこ、心に決めた。

 

 今度からは、ちゃんと、少しずつえっちしよう。

 

 ルナはそんなつもりはなかったのだが、ライオンを我慢させるととんでもないことになるというのは、良くわかった。なんだかアズラエルは、今までの我慢が爆発したような抱き方だった。

 グレンはグレンで、彼も夢中になると歯止めがきかない、というのは去年の椿の宿の夢で分かっていたはずだったのに……。

 

 ルナは、もう、指一本動かせない。

 離してくれたとはいっても、きつい拘束が緩んだだけだ。ルナの身体を縛っていた帯が解かれただけ。アズラエルとグレンはまだ、ルナに絡みついている。アズラエルの褐色の大きな体が、うつぶせのルナの上に乗りあげ、項を甘く、吸い上げる。

 「愛してるよ、ルゥ」

 甘い声。――ライオンは満足したようだ。さんざん、ウサギを可愛がったから。

 「俺も愛してるよ、ルナ」

 トラも、ルナの小さな手のひらを持ち上げ、キスし、髪を撫でて頬に指を滑らす。

 「――俺たち二人で、ずっと可愛がってやるからな……」

 

 (……!? 何言ってるの!?)

 

 ルナはもう、声が完全に枯れてしまって、何も言えなかった。口をパクパクさせたが、ふたりはにっこりと笑う。

 

 「地球に行けば、全部のしがらみを捨てて、ルナだけを見ていられる。――なあ、“兄さん”」

 「そうだな。――女神は、俺たちだけのものだ」

 

 ――これは、夢だ。

 

 ルナは思ったが、できたのは思うことだけだった。

突如、ボーン、ボーン、と壁掛け時計の音。……忘れていた。この音が鳴らないと、夢は全部終わったことにはならないのだった。

 「ルナ、愛してるよ」

アズラエルとグレンの声を聞きながら、ふたりの腕の中で、くたり、と意識を失った。